BOOKS 著作本

  

  

【新刊】『不機嫌な英語たち』(晶文社、2023年)

『不機嫌な英語たち』東京の小さなマンションでピアノを弾いて育った真里が、父親の転勤でカリフォルニアに連れていかれ、まるでわからない英語の世界に放り込まれるなかで経験する、さまざまな発見や出会い。数年後に帰国し、毎日朝夕に国旗掲揚があるような学校に「帰国子女」として編入した後、日本の大学を卒業した真里は、こんどは自分の意思で再びアメリカに渡り、ニューイングランドの大学院で学び、やがてハワイに職を得る。英語ができるようになってからの真里が出会う「アメリカ」は、カリフォルニアでの経験とはまるで違うものだった。「英語ができる」だけではなく、「日本人」であり「アジア人」であり、「女性」でもあり、そして「大学教授」にもなったMariが身につけた、あるいは否応にも課せられた属性は、Mariが見る世界や経験する人間関係をさまざまに形作っていく。
「日本の私」と「アメリカの私」、「日本語の自分」と「英語の自分」の重なりと溝を描く「バイリンガル私小説」。




『親愛なるレニー −−レナード・バーンスタインと戦後日本の物語』
(アルテスパブリッシング、2022年)

『親愛なるレニー ~レナード・バーンスタインと戦後日本の物語』第35回ミュージック・ペンクラブ賞第71回日本エッセイスト・クラブ賞第11回河合隼雄物語賞受賞

20世紀の巨匠レナード・バーンスタインに数々の手紙を送り続けた、知られざるふたりの日本人、「カズコ」と「クニ」。バーンスタインとふたりが紡いだ愛の物語を軸に、冷戦期のアメリカ政治と文化外交、日米関係、音楽産業の変遷、国家と芸術、性と家族などが絡み合うなかでの「世界のマエストロ」の生涯と功績を辿ります。2019年にDearest Lenny: Letters from Japan and the Making of the World Maestro としてオックスフォード大学出版より刊行された書籍を、著者みずから日本の読者に向けて翻訳・再構成しました。

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(和泉真澄・坂下史子・土屋和代・三牧聖子と共著)
『私たちが声を上げるとき アメリカを変えた10の問い』
(集英社新書、2022年)

私たちが声を上げるとき
世界を揺るがしているBLM運動や#MeTooなどの背景には、さまざまな不条理を問いただし、勇気をもって声を上げてきた女性たちの歴史がある。5人の女性アメリカ研究者の連帯から生まれた本書では、ローザ・パークスからルース・ベイダー・ギンズバーグ、ハウナニ=ケイ・トラスクから大坂なおみに至るまで、現代アメリカで声を上げてきた10人の女性に焦点をあて、彼女たちの言動の背景や状況、影響をインターセクショナルな視点から分析し、世界に蔓延する不正義を他人事ではなく当事者として考える。




編著Unpredictable Agents: The Making of Japan’s Americanists During the Cold War and Beyond (University of Hawaiʻi Press, 2021)

Unpredictable Agents
本書は、12人の日本出身のアメリカ研究者たちが、「アメリカ」との出会いと「アメリカ研究者」になるまでの道程を語るエッセイを集めたものです。日本出身とは言っても、占領下の沖縄から北海道のメノナイト宣教師コミュニティまで、著者の育った環境は多様で、「アメリカ」との出会いも、移民として渡米した親族の歴史、親の駐在による米国滞在、自らの留学体験など実にさまざま。冷戦の力学によって形作られた知の様相を辿ると同時に、個人的な物語と主観的な視点に焦点を当てることで、歴史や政治と個人の関係、そして日米それぞれにおける「アメリカ研究」のありかたを複層的に捉える一冊になっています。




Dearest Lenny: Letters from Japan and the Making of the World Maestro (Oxford University Press、2019)

Dearest Lenny: Letters from Japan and the Making of the World Maestro
20世紀アメリカ音楽のシンボルであり、また、ジャンルや文化を超えて世界じゅうに圧倒的な影響力をもったレナード・バーンスタインを、熱烈なファンそしてサポーターとして支え続けた、ふたりの日本人がいました。ひとりは、1947年からファンレターを書き続け、人生のさまざまな段階でバーンスタインへの愛情を心の支えとし、彼の活躍を見守った女性。もうひとりは、1979年のバーンスタイン来日時にマエストロと出会い、以後数百通ものラブレターを送り、やがてはバーンスタインの日本代表となった男性。このふたりがバーンスタインに送った未公開の書簡を通じて、国境や文化、地位や年齢を超えた強い絆が生まれた過程や、変化する愛情の形を描きます。




『「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?
−−人種・ジェンダー・文化資本』(アルテスパブリッシング、2013年)

「アジア人」はいかにしてクラシック音楽家になったのか?小澤征爾、ヨーヨー・マ、内田光子、五嶋みどり、ラン・ランなど数多くの「アジア人」が西洋音楽の分野で世界的な活躍をするようになったのはなぜか。音楽創造という行為と、人種・性・社会階層などのアイデンティティにはどんな関係があるのか。そもそも音楽の「本質」や「神髄」とはいったいなんなのか。音楽家自身はこういった問題をどう考えているのか。そうした問いについて歴史的・文化的・民族誌的な視点から考察したMusicians from a Different Shore: Asians and Asian Americans in Classical Music (2007年)を、著者みずからが日本の一般読者向けに翻訳したものです。

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  『ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール
      ——市民が育む芸術イヴェント 』(アルテスパブリッシング、2010年)

クライバーン・コンクール2009年、日本の辻井伸行さんと中国のハオチェン・チャンが優勝して日本でも広くその名を知られるようになったヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール。私はそのイヴェントの一部始終を現地で見学する機会に恵まれました。毎回テキサスの一地方都市フォート・ワースで開催されるこのコンクールが、チャイコフスキー、ショパン、リーズなどと並んで世界でももっとも権威のあるピアノ・コンクールに発展した歴史、1200人のボランティアが支えるコンクールの舞台裏、そしてもちろんコンクールの舞台で繰り広げられるドラマを描いています。コンクール関係者とのインタビューも掲載した多角的ドキュメントです。

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  『性愛英語の基礎知識』 (新潮新書、2010年)

英語基礎知識
恋愛や性のありかたは、世界共通であるようで、それぞれの社会や文化のかたちを色濃く反映しているのも事実。異性に声をかけるときには、どんなセリフを使うのか?「デート」とはなにを指しているのか?関係がもつれたり破綻していったりする過程ではどんなやりとりが交わされるのか?ベッドのなかではどんな言葉が発せられるのか?微笑ましかったり、滑稽だったり、そしてとってもエッチだったりするアメリカ英語表現の解説をとおして、現代アメリカにおける恋愛、結婚、セックスなどをめぐる社会通念や風俗などを紹介します。文化批評としても、そしてもちろん実用書としても、楽しめる内容となっております。

『ドット・コム・ラヴァーズ——ネットで出会うアメリカの女と男』
(中公新書、2008年)

ドット・コム・ラヴァーズ
オンライン・デーティング、すなわちインターネットを通じて「デート」の相手を探すことは、アメリカでは、年齢や人種、社会階層、職業を超えて、すっかりメインストリーム化しています。ニューヨークおよびハワイでの、私自身のオンライン・デーティングの体験を通じて、インターネットを介した出会いや恋愛のありかたを伝えます。そして、出会った男性たちの姿と、私と彼らの関係から、人間臭いアメリカの一端を描きます。著者としてはアメリカ文化論として書いたつもりなのですが、恋愛マニュアルのように読む読者もいるらしく、「在米日本人版セックス・アンド・ザ・シティ」と形容する人もいます。

(矢口祐人と共編著) 『現代アメリカのキーワード』
 (中公新書、2006年)

現代アメリカのキーワード
2001年9月11日のテロ事件から5年たったアメリカの、複雑で多様な姿を、81本のエッセイを通じて伝える事典風の読みものです。「アブ・グレイブ・スキャンダル」「刑務所産業複合体」「キリスト教右派」から「マーサ・スチュアート」「クイア・アイ・フォー・ザ・ストレート・ガイ」「ミッシェル・ウィー」にいたるまで、重要で象徴的でありながら、日本ではあまり知られていない事柄について、日米の研究者や活動家、芸術家などが紹介・分析しています。まだオバマ氏が日本であまり知られていなかった2006年に刊行された本書は、アメリカのもっとも重要な政治家のひとりとしてオバマ氏を取り上げています。

『アメリカの大学院で成功する方法——留学準備から就職まで』
(中公新書、2004年)

アメリカの大学院で成功する方法
日本からアメリカの大学院にたくさんの学生が飛び立って行きますが、日本とアメリカの大学院教育の違いやアメリカの大学院生に期待されているものをじゅうぶん理解していないがために、たいへんな苦労をする留学生が多いです。アメリカの大学院で博士号を取った経験と、またアメリカの大学で大学院生の指導をするようになった立場から、「プロ養成機関」としてのアメリカの大学院を最大限に活用するための手段と心構えを説いた実用書です。読んでも勉強そのものは楽にはなりませんが、大学院の仕組みを理解することで、限られた時間やエネルギーのより多くの部分を本質的な勉強に向けられるようになると思います。

英語

  

Musicians from a Different Shore: Asians and Asian Americans in Classical Music (Temple University Press, 2007)

Musicians from a Different Shore
クラシック音楽の世界における、アジア人そしてアジア系アメリカ人の台頭は、ここ数十年間とくに注目を集めています。なぜアジア人がこれだけ西洋クラシック音楽に傾倒し、これだけの活躍をするようになったのか。アジア人・アジア系音楽家たちは欧米の音楽界でどのような位置を占めているのか。また彼らは、自らの人種や文化的アイデンティティと西洋音楽の関係をどのように考えているのか。そうした問題を、歴史的背景を考察しながら、百人ほどの音楽家たちとのインタビューとフィールドワークを通じて検討した本です。

Embracing the East: White Women and American Orientalism (Oxford University Press, 2003)

Embracing the East
西洋と東洋の政治的・文化的な関係を分析する上で、西洋=男性、東洋=女性という図式が、よく使われてきました。しかし、この二項対立では、アメリカ=アジア関係、とくにその文化的関係において重要な位置を占めてきた白人アメリカ人女性の役割を説明することはできません。19世紀末から20世紀初頭にかけて東洋美術や工芸品を収集した中上流階層のアメリカ人女性たちや、『蝶々夫人』の役を舞台で演じた女優や歌手、アジアの専門家として国際的に多大な影響力をもったパール・バックやルース・ベネディクトなどの女性たちの、日本や中国との関わりかたを分析した、学際的な文化史です。

The Fall of Language in the Age of English (Columbia University Press, 2015)


私が敬愛する作家、水村美苗さんの名著『日本語が亡びるとき』の英訳です。私が原文を一通り訳し、水村さん本人および日本文学作品の名訳者として知られるジュリエット•ウィンターズ•カーペンターさんが手を入れたものです。歴史的•理論的な分析に根ざし、英語の世紀において非英語の「国語」で文章を読んだり書いたりすることの意味、「国文学」の役割を問うこの作品を、英語圏の読者に届けることは、とても大きな意味があることで、この仕事に携わることができたのは大変な光栄です。英語読者に向けた水村さんの論考を、原著と合わせてお読みください。

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